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小説『君だけの甲子園』(中)

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春大会は、東京のベスト8まで、こぎつけた。

昨年秋も、東京ベスト8。

この壁を破るところから、夏への始動が始まった。

この春から、実質、選手への指導をはじめた、コーチの高山哲は、選手への、細かなアドバイスは控えてきた。

しかし、春大会終了後、全体ミーティーングで、はじめて、詳細な指導を行った。

練習後の、合宿所でのミーティーングルームには、高山哲の妹、陽子がいた。

彼女は、アメリカ・ニューヨークで、スポーツのフィジカルトレーナーをしている。

今週末、中学の友人の結婚式のため、来日していた。

コーチの高山哲は、97名の部員に、まず英語で語りかけた。

「How you think is everything 、全ては思いによって決まる」

「目標<優勝>に対して、強い思いをもつこと。

そして、色々な場面で、その強い思いを言葉に出して、自らに訴えていくことよって

心と体が、そちらに向かって動いていく。

その結果、目標が現実化する可能性を限りなく高めることが出来る」

福田老監督は、選手の後方から、見守りながら、教え子の話を聞いていた。

「自己の思いを、声にあらわし、動作(プレー)につなげていく。

シンプルかもしれないが、これが、己の潜在能力を限りなく、開いていくんだ。」

とコーチの高山哲は、選手ひとり、ひとりに噛んで、ふくめるように伝えていった。

自分の現役時代は、ライバル兄弟高校の、聖橋三高との、夏の決勝戦について、言及した。

ライバル兄弟高校の、聖橋三高との決勝戦、2対0で、高山哲は、三高打線を完封した。

打のほうでも、後に、プロ入りした、聖橋三高のエース佐竹から、3打数3安打を放った。

その時、コーチの高山哲は、「はじめて、ボールが止まって観える体験をした。

無(ゾーン)に入った経験をしたのだ。」

さらに、コーチの高山哲は、選手に語りかけた。

「今と違い、夏大会は、東京1代表の時代だった。

7日間で、6試合の試合日程であった。

すべての試合先発し、ほぼ一人で投げぬいた。

抽選も、3回戦で、その春のセンバツ出場の明田高校、準決勝は、これまた、センバツ出場校荏城高校に延長11回 3対2で、サヨナラ勝ち。

決勝戦は、足首の捻挫、右肩は重く、試合前のキャッチボールは、数メートルしか届かない状態であった。

しかし、自分には、肉体的には、限界を超えても、精神的な、限界を感じなかった。

絶対に、悔いだけは、残したくなかった。

自己のフィーリングに、試合前から、というより、大会前から、聖橋三高に勝てる、優勝できるという、フィーリングがあった」

さらに、

「思いを、声にあらわし、動作(プレー)につなげていく」シンプルではあるが、練習や、試合で、心がけるポイントについて、話した。

「例えば、9回裏ツーアウト満塁、一打 逆転のチャンス。

凡打なら、ゲームセット。

この場面で、ワクワクした気持ちで、打席に立てるか、否かなんだ」

そして

「この最大のチャンスやピンチのときこそ、

How you think is everything 、全ては思いによって決まるのだ」

チーム一丸となって、思いを、声にあらわし、強気なプレー(動作)につなげていくんだ」

 コーチの高山哲の妹・陽子は、兄の話を、後方斜めの席で、じっと、優しい眼差しで、聞いていた。

コーチの高山哲は、さらに、自身の夏、甲子園大会の話を続けた。

「初戦は、センバツ大会の優勝高校の三田商業だった。エース平田は、その後プロ野球でも、エースになった。センバツ優勝高校との、エース同士の投げあいになる。

しかし、東京予選、準決勝の際に、捻挫した足首痛のため、開会式はでれなかった。

満身創痍で、センバツ優勝高校の、開会式の当日、三田商業との勝負となった。

だれしも、センバツ優勝高校の三田商業、平田投手の勝ちを疑わなかった。

しかし、

私たちは、センバツ優勝校、三田商業を、4対0で、完封勝利した。」

そして

「なぜ、激戦区東京、強豪聖橋三高、センバツ優勝高校の、三田商業を、連続完封できたのか。

それは・・・・」

と、コーチの高山哲は、選手ひとり、ひとりに、話をかけていった。

さらに、妹の陽子に手伝ってもらい、ジュースの試飲通じて、人間の感覚が

いかに、あてにならないものか、実験して見せた。

「How you think is everything 、全ては思いによって決まる」

聖橋二高の97名の部員たちは、コーチの高山哲の話を聞きながら、誰もが、心に生じた、たしかな変化を感じとった。

それは、28年、優勝から遠ざかっていた聖橋二高野球部員が

勝ちたい優勝したいから、勝てる、優勝できる」への、たしかな心の変化だった。

つづく

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